30歩の、ショオト・トリップ。

オフィスと家の往復。
パソコン、家事、いつもの光景。
幸せだけど、ときどき物足りなく感じてしまいそうにもなる。

私たちの日常なんて、そんなものだ。

でも。
今日みたいに真っ青に晴れた日は、
ちょっとだけ現実逃避でもしてみたい気分になる。

 書を捨てて街に出よう。

  どこかで聞いた事のある本のタイトル・・・

そんなときは、大好きな街・自由が丘をめぐりに
行こう。
雑貨屋さん、インテリアショップ、アクセサリー、
ファッション。
町全体がおしゃれで、背筋が伸びる感じが好き。

向かったのは、駅の南口を出て、マリクレール通りを
左に歩くとすぐにある、
ノスタルジックな古本屋さん「東京書房」。

店頭には、本を買ったおじいちゃんとおばあちゃんが、のんびりと立ち話をしている。

目がくらむほど、ほのぼのとした光景だ。

店頭には季節の本が並んである。
12月ならクリスマス特集。6月ならきっと雨の本。

さて。店内を、時計周りに巡ってみよう。

このときは、入って左側は料理本。
お菓子の本や多国籍料理の本などが、
表紙を向けて並べられている。

その向こうの美術関係の本は、幅も厚さもバラバラ。
ちょっと無造作な雰囲気。
これは、あえて不揃いに陳列しているのではない
だろうか。
見事なほどにアーティスティックだから。

どんな本が入っているのかチェックしつつ、奥のレジをみると、
お店のおばさんが座っていて、本を掃除している。
 きっと誰かが想いを込めて読んでいた本。
  またどこかの誰かが手にする事を考えると、とても素敵。

その横の本棚には、ひまわり!それいゆ!
その歳の方なら、ティーンエイジャーだったころが
懐かしくなるのだろうし、
レトロだと感じる方もいるんだろうな。

だけど、支払はクレジットカード対応なんて。
古いけど、新しい。この混在にワクワクする。

ここまでで、店内半週。

さて、右に回る。
美術、音楽、建築、さらには洋書も充実している。
紙芝居や絵葉書が吊られていたり、
本棚の奥行きに収まりきらず、顔を出している本が
愛くるしい。

そして、学術系の古書が天井まで、横に、縦に、と、ぎっしり並べて積まれている。

横にある脚立には気づかないふりをして、高いところにある本に手を伸ばしたら、
誰か知らない人(けれどカッコいいと相場は決まって
いる)が手を貸してくれるのかもしれない。

なんて、小さな妄想。

床には、子供目線のブックスタンド。
しゃがみこんで、必至にページをめくる光景が思い
浮かんで、笑みがこぼれる。

 

そんなことをしていたら、あっという間に一周。

数えてみたら、ちょうど30歩。

30歩で、いろんな世界に触れた。
ささやかな旅行をしたみたい。

この雰囲気に浸って、
せっかくだから普段は手を伸ばさない本を選んでみるのもよさそう。
大量に買い込んでもお財布にやさしいのが、古本の
いいところだし。

この日は、ハンドメイドの古本と絵本を数冊購入して、
2階にあるカフェ「るなん」でお茶。

誰に作ってあげようかなあ、なんて思いながら、
袋から古本を取り出す。

会社にも、大型の古本屋さんにもない、ゆっくりとした時間。
もう充分に満足な気持ち。

コーヒーが運ばれてくる。

 

本を開いて、思いっきり深呼吸をした。